一より習ひ

「稽古とは一より習い十を知り、
 十よりかえる元のその一」なのだそう。
 和の世界をマイペースで巡る
 植田伊津子の徒然記です。

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

- | - | -

明光展終わる

今回も盛況のうちに、に志田の「明光展」が終了。
休日開催だったせいか、開始予定の30分以上前からお客さまがお越しになるなど終日大にぎわいで、スタッフはお昼もそこそこにという状態だった。うれしい悲鳴である。

さて、わたくしも一日さまざまなご相談に乗った。
また実際にお相手できなかったたくさんの人たちからひっきりなしに「ネットの記事、拝読しています」「ブログの愛読者なんです」と、すれ違いざまにお声をかけてもらったりもした。ネットの波及効果ってすごい。まことに恐れ多いことである。

お客さまのなかで、これまで洋服の姿しか見たことがなかった方が、きものでお越しくださったりもした。
お相手をしているときに「この方の雰囲気に合っているかな」と想像しながら商品をおすすめするわたくしたちは、お似合いなのを拝見する一瞬がとてもうれしい。このお仕事ならではのよろこびだと思う。「よかったなあ。素敵だなあ」とポッと心が温まる(^_^)。

ありがとうございました。

次回、秋の展示会は10月初旬あたりの予定だという。またブログでもお知らせします。

着こなし | comments(0) | trackbacks(0)

に志田「春の明光展」迫る

ずっと貴人清次の薄茶と濃茶、続き薄の自主稽古をしている。わたくしが苦手とする小習である。
毎日カラ点前をおこなって、就寝前の入浴時に茶道教科や淡交テキスト点前編でおさらいをする。本の隅が擦り切れはじめているというのに、何度復習すれば気が済むのか。

そういえば、先週同い年の編集者仲間と食事をしたときに、記憶力の衰え自慢みたいな話になった。
はじめはギャク的なエピソード披露であったが、次第にマジメな「労り合い」のような雰囲気になって、洒落にならなかったほどである(^_^;)。

わたくしは、近年きもののお仕事でいろんなお客さまとお目にかかる機会が増えた。そのとき「たしか……この前もお会いしたのに」と、顔は覚えているのに名前がどうしても出てこない場合がある。そのたびに恐縮しながらお名前を尋ねている。
何度も聞いてしまっていてごめんなさい、とブログでも謝っておこう。

さて今週末の4月4日(日)、京都の老舗呉服店、
に志田「明光展」が開催される。こちらは典雅な気品あふれる京呉服のお店として知られていて、きもの雑誌でもおなじみ。




今回もわたくしは1日会場にいるので、何かご相談事があれば、気軽に声をかけてほしい。

これまで「に志田」は休日に東京展示会をしたことがなかったが、お客さまの「ぜひ休日に!」というご要望に応えて、今春はじめて日曜日に開催することになった。ちょうど桜満開とも重なっているし、お天気も晴れとのこと。お出かけ日和じゃないだろうか。

毎回会社の昼休みを抜け出して、慌ただしく来ていたKさん。ずっと「平日は行けない」とおっしゃっていたTさんやAさん。
今回は休日です♪。皆さま、ぜひきものでいらしてくださいな。お待ちしています。


お客さまが入る前に、会場に商品が並んだときのワクワク感がたまらない。東京では日頃見ることの少ないたおやかな色、かわいらしい柄が幸せな気持ちにしてくれる。
柄のお好みはいろいろあるだろうが、色に敏感な人のむずかしい要望に応えられるのが「に志田」の持ち味である。よい色無地をつくることができるお店として外せない。

----------------------
に志田「春の明光展」

会期 2010年4月4日(日)
時間 11時〜18時
場所 
銀座スターホール
   東京都中央区銀座5丁目8−1(銀座4丁目角)

お問い合わせは「に志田」(075-231-3684)まで。
本来は来場の際に上記のような案内状が要りますが、日にちが迫っているので、前日までに「植田のブログを見た」とお店にお電話さえすれば大丈夫だと思います。

※ご来場予定の方で、植田宛に前日までにメールを下さいましたら、その時間はご希望のお客さまの相談に個別にのらせてもらいます。本サイトプロフィール欄のメールアドレスよりお問い合わせください。



着こなし | comments(1) | trackbacks(0)

卒業式のよそおい

子どもの卒業式が明日に迫った。

こうした場合の式服は、わたくしの場合きものである。保育園のときも、小学校の入学式のときも、きもので通した。流行や体型の変化が多少あっても洋服のように買い替えなくても済むし、自分で頭も着付けもおこなうからじつに安上がりである。

さて何を着ていこうか……と手持ちのきものをいくつか出してきてコーディネートを考える。たしか入学式のときは晴れやかな訪問着だった。
それも悪くないと思ったが、卒業式は「別れ」の場でもあるから、入学式よりは多少控えめなものを身につけたい気持ちがする。

結局、色無地の一つ紋付きにしようと、それらを何枚か出してみる。
いちばんの候補のきものが、なぜか見あたらない。そういえば悉皆屋に手入れに出したままで戻ってきていなかったらしい。

では江戸小紋の一つ紋付きから選ぶかな……としばらく箪笥をにらみながら思案をしていたが、ふと思い直して濃グレー無地の一つ紋付きを肩にかけてみる。




これは、10年近く前に半喪服用にと誂え染めをしたもの。茶席のきものとして追善茶会にも使いたい、そろそろこういうものを一着用意しておこうと仕立てたのであった。

染めてもらう色はグレーと決めていた。
グレーはクールで微妙な色調が持ち味。とくに江戸っ子たちに愛されてきた背景がある。その人気は、今に残る「利休鼠」「深川鼠」「銀鼠」「素鼠」などの「何々鼠」といった呼称からもうかがえるだろう。

わたくしは、「色味」を感じるような、こっくりとしたグレーが望みであった。深いグレーを求めて何色かをテストし、慎重に染めてもらう。白生地も吟味して、その当時の最高級品であった松岡姫という種類の中から、その店舗オリジナルの地紋を選び、背には日向の一つ紋を染め抜いてもらった。

できあがったときに
「植田さんがお望みのグレーに染まりましたよ。このくらい深みのあるグレーなら半喪服としてはもちろん、感じのいい洒落袋を締めたらパーティーにも使えます。また厳粛な式服としてもお使いになれますよ」
と、志ま亀の担当者さんが誇らしげに話していたのを思い出す。たぶん会心の色に染まったのでお店の人も鼻高々だったのだろう。
わたくしも「なんていい色だろう。コレ一枚あれば一生安心」と深く感謝した。

色無地の紋付きのきものは、よい白生地とよい染めで誂え染めをしておけば、どんなときでも、どんな場所でもけっして見劣りしない。芸のある色無地は、シンプルなカシミアのように「質」を際立たせてくれるから、ときに並の訪問着よりも訴求力を持つ。

わたくしは、日頃はグダグダな恰好をしていて一向に構わないのだけれど、卒業式などの「式」には紋付きが着たい。そういうところのケジメをつけたい人間なのだと思う。

明日はこの落ち着いた濃グレーの一つ紋付きに格調のある唐織の帯を合わせよう。そうしたら息子の健やかなる6年間を感謝する気持ちにすっとなれるような気がする。大丈夫かな、こっちが式で泣いてしまうかもしれないけれど。
わたくしらしい心延えがあらわれた卒業式のよそおいのような気がする。


グレーは不思議な色である。鼠色は明度によって幾通りもの表情を見せる。なかでも銀鼠は意外なほど派手になる。この色はやや青味がかった素鼠という感じだろうか(志ま亀)。
能装束からとった唐織の桐菊文様袋帯(に志田)を合わせ、帯揚げは綸子地の雲取り絞り(きねや)。帯締は礼装用の白金貝の口組(道明)にしよう。


着こなし | comments(7) | trackbacks(0)

無事終了しました

『選りすぐりの御召展』無事終了いたしました。
初日は暖かな陽気のせいか、午後はすごい人出でしたけれど、2日目は午前午後ともに平均的にお越しいただいて、初日よりは余裕を持ってご相談に乗ることができました。
当ブログ「一より習ひ」、きものブログ
「きもの*BASICルール」をお読みの皆さまに多くお越しいただき、深く感謝いたします。

お気に入りの着尺が見つかってご購入になった皆さん、懐事情を鑑みて購入を見送られた方といろいろでしたが、御召のさまざまを御覧になって、くつろいたひとときを味わっていただけたのでしたらこちらもうれしく存じます。

かわいらしい中学生のお嬢様をお連れになった方もいらっしゃいましたし、母と同世代かな、と思われるような方もおいでで、幅広い皆さんがこれらのサイトをご愛読になっているのだな、と痛感した次第。
おひとりおひとりと、もう少しゆっくりとお話できればよかったのですが……。

また、
あまりにもバタバタと走り回ったせいか、初日の夕刻になると、久しぶりにきものがおそろしいほどに乱れており(引きずりのきもののようでした)、「こんな姿で、御召の説明をされても説得力がないなー」と、苦笑いする始末だったのが反省点でしょうか。
現実のわたくしを見て、幻滅された方もたくさんおいでかと思いますけれど、どうか平にご容赦のほどお願いいたします。

さて、またどこかで皆さんにお目にかかる機会があるかもしれません。
まずは御礼一筆申し上げます。

植田伊津子拝

着こなし | comments(0) | trackbacks(0)

選りすぐりの御召展

『選りすぐりの御召展』本日第1日目。

午前中はゆったりしていましたが、午後からたくさんの方がお見えになりました。
『当ブログのファンです』とおっしゃる方が多数おいでくださり、本当に厚く御礼申し上げます。

そのおひとりおひとりゆっくりお話しがしたかったのですが、皆さんのお出かけになる時間が重なって、長時間お待たせしたり、まったくお話ができずじまいの方が多くありましたこと、深くお詫びいたします。せっかく足を運んでくださいましたのに、申し訳ありませんでした。

もし明日お越しになるご予定の方がおいででしたら、午前、もしくは午後3時過ぎ頃なら、余裕をもってお相手できるものと思います。
できることならご足労いただいた皆さんと、慌ただしくなくお話をしたいので、可能な範囲でお時間を調整くださいますと幸いに存じます(^_^)。


植田伊津子拝



このところの当ブログ、なんだか宣伝めいておりまして、申し訳ありません。えーっと、たぶん来週からふつうの毎日になるかと思います。でも、今日だけお許しを。

〈追記〉
〜紀尾井人形浄瑠璃のお知らせ〜

さて2月23日(火)・24日(水)に、第3回となりました「紀尾井人形浄瑠璃」が開催されます。
これは普段、同じ舞台には立てない文楽人形さんと女流義太夫の面々が共演する、という夢のイベント。
毎回大変好評を博しており、今回はAプロとBプロ、各2回公演となりました。そのBプロのチケットが、本日現在、少しだけ余っているのだそうです。

わたくしは前年この公演にうかがって、女性の声にのせて操られる人形浄瑠璃の世界に深い興味を覚えました(その様子は
こちらを参照)。
もちろん、わたくしは今年もA、B公演ともにうかがいます。

仲良くしている女義のお三味線・鶴澤寛也さんはBプロで、竹本綾之助師匠と「ととさんの名は〜♪」で有名な『傾城阿波の鳴門 巡礼歌の段』を演奏されます。

チラシ・出演者など詳細は、寛也さんのHPの
公演案内よりご覧下さい。

☆チケットのご予約は、紀尾井ホールチケットセンター 電話03-32237-0061(10時〜18時、日祝休)で受け付けているとのこと。




着こなし | comments(0) | trackbacks(0)

プライスレス

お知り合いの方の帯のご相談。

大寄せ茶会にお客さまとしてうかがうときや、茶会のスタッフとして参加するときに締める「適度に格調、適度にゆるやか系」の茶席の万能帯を探していらっしゃるという。

私が「そういう帯が、お茶人さんにとって一番出番が多いと思う」と話しているのを聞かれて、お見立てを頼まれたのである。

まず、だいたいの予算をうかがう。
予算は大切。懐が温かければなんでも解決できると思うけれど、予算が少なくても、その方の立場や年齢、雰囲気に合った適正価格の帯を見つけるのがおもしろい。

私自身、きものを着る側に立っている人間で、自分でもいろいろ買っているから、そこらへんはシビアである。

今の時代、安い商品はいくらでもある。インクジェットでプリントされたきものだってつくられているのだ。そんな世の中、その方にとっての「プライスレス(お金では計れない何か)」の部分が大切になってくる。

さて、懇意の産地問屋さんに連絡をして、ツボと思われるラインをいくつか用意してもらっておいた。

「もしかしたら、見せてもらうだけになるかもしれませんけれど……」と、ひと言断りを入れておいたが、「大丈夫。たくさんめに用意しておいたよ」と言ってくださる。いつも無理をお願いしてすみません。

今日はご当人と私との2人で内輪の展示会へ出かけ、実物を見せてもらってきた。

私は、その方のお手持ちのきものを事前に見ていたので、
「これなら、こういう合わせ方ができます。炉開きや初釜にも使える格がありますね」
「そっちはお手持ちのきものとは、正直あまり合わないです……」
「さきほどの帯より格下になるけれど、このなごや帯なら、およばれ小紋や色無地一つ紋にも使えそう。その場合の帯揚げ・帯締の挿し色はこんな色を持ってくると効きますね」
などと適宜アドバイスをしながら、他の品物も含めて、ゆっくり拝見させてもらう。

思案投げ首のち「どっちも捨てがたい。どっちも欲しい」と、オススメしたなごや帯と袋帯の両方をお求めになることになった。お茶をされる人なら重宝すること間違いない。喜んでいただいて私もうれしいし、本当によく似合われると思う。
いつか、これらの帯をお締めになった姿を拝見したい。私にとって、それがなによりの幸せだろう。


JUGEMテーマ:着物 きもの

着こなし | - | -

HIROCOLEDGEとawai

暑い。暑い。暑い。南無南無。
太陽が
カッと照りつけるなか、六本木のミッドタウンへ出向いた。

ミッドタウンのカラーに合った、トンがった浴衣の限定セレクトショップ「HIROCOLEDGE(ヒロコレッジ)」が楽しい。
縞、水玉、青海波といったシンプルな古典柄を、現代に生きるコンパクトモチーフとしてとらえ直したデザイン性の高い浴衣を提案する。


ボディーの浴衣は、浴衣の老舗・竺仙とHIROCOLEDGEのコラボ作品。


このブランドを手がけるのは、芸大出身の若手デザイナー高橋理子(ひろこ)さんである。高橋さんは、2007年のミス・ユニバース世界大会に出場した森理世さんのナショナルコスチュームを手がけ、そのインパクトとともに、見事、森さんが優勝したことで注目を集めた。



ミス・ユニバース時の森さん。アピール大の装いである。

この対象の見据え方、何かに似ているような気がする。あ、そうだ。戦国武将系かもしれない。陣羽織や甲冑、武具にほどこされる意匠に近い。
これらは、モダンデザインの先駆けともいえるシンプルさで、対象を整斉し、記号化する。戦場においては、百合や撫子みたいな情緒のある文様なんて必要なかったのだ。
戦国武将のきっぱりとした心意気と高橋さんの現代デザインとが、意外なところで通底しているような気がして、不思議な印象を持つ。
森理世さんが、高橋さんのデザインでミス・ユニバースの世界大会に優勝したのも、なんとなく納得がいく。「名乗り」を上げるにふさわしいデザインだもの。

浴衣のデザインは、女子よりも男子のほうがすんなり着こなせそうに感じるけれど、雰囲気のある女性が、とぼけた風に着てもかわいいかも。ただし、いわゆるふつうの人には難易度が高いように思う。「他の人と私は絶対に違う。我こそは…」と主張したい、おしゃれ猛者のための浴衣。着こなし甲斐のありそうな商品群をじっと眺めて、ひとり妄想する。




一度行ってみたいと思っていた話題の呉服店「awai」へ。博多織の織元、岡野のアンテナショップなのだそうだ。
博多帯といえば普段使いのものという印象があるが、「決まりきった見方をしていた私が悪うございました」と思わず頭を垂れる。博多帯とはそういうものなのだ、思いこんでいたのは、使い手側の想像力のなさだった。

金や銀、漆を貼った和紙を細く裁断したものを経糸に用い、染織した絹糸を緯糸として丹念に模様を織り上げた「佐賀錦」。夏帯の人気品「紗献上」はもちろんのこと、こちらの織元オリジナルの「絽献上」も見せていただく。


織元・岡野オリジナルの絽献上。昨年第52回新作博多織展 内閣総理大臣賞を受賞した。紗よりも凝った地風なので、6月の単衣から盛夏に合わせられるという(紗献上は7・8月の盛夏に締める)。この画像はこちらのHPより引用。

博多帯といえば、キュキュとした絹鳴りの音とともに「締めやすい」のが特徴だ。多くの経糸に太い緯糸を強く打ち込んでいるから、ハリとコシが生まれるのである。西陣織の帯の経糸は約4000本だが、博多帯は6000〜8000本なのだそうだ。
一枚でもしっかりしているので、帯のかたちがきれいにあらわせるし、それでいて軽い。博多帯は、きもの初心者が帯を結ぶ練習をするにも最適である。

「リアルクローズの着物ブランド  awai」とうたっているように、帯だけではなく着尺もあつかっている。
「どんなお客さまが多いのですか?」と聞いたところ、「きものが好きでawaiというお店をご存じの上でいらっしゃる人も多いわけですが、六本木という土地柄、いろんな洋服をひととおり体験した方がふっと入っていらして、『こういうきものを着てみたいな』といってくださいますね」。

そうだろうなー。敷居の低さを感じる雰囲気である。呉服屋さんじゃないみたいだし。それがawaiの最大の魅力なんだろう。




JUGEMテーマ:着物 きもの



着こなし | - | -

半幅帯の帯幅

故郷の同級生たち有志による暑気払いの会が渋谷で催された。3ヶ月に一度、顔を合わせてバカ話をする会である。

渋谷駅に降り立つと、浴衣姿をチラホラ見かける。若い方のハッちゃけたデコ盛りの着こなしもあるが、私の場合、やはり大人の年代の方たちの浴衣の装いに目が行く。

半幅帯がむずかしい。前はそうでもないけれど、後ろから見ると帯のボリュームが足りなくて、お尻がとても大きく見える人が多い。
女性は30代も半ばを越えると腰回りにお肉がついてきたり、ヒップが下がってきたりする。半幅帯がお尻の上にちょこんと乗っているような結び方だと、余計に大きさを強調するのだ。

半幅は帯幅の半分だから15cmほどなわけだが、お尻が大きい場合、変わり結びをして後ろを大きくつくったとしても、通常の15cmではやや狭いのではないかと思う。

昔、京刺繍作家の
長艸純恵さんのところに、普段着のきものの取材にうかがったことがあった。長艸さんの日常は半幅帯だという。この年代にしては身長もおありだし、華奢という体型ではない。その長艸さんに半幅帯の着こなしのポイントを聞いたことがあった。

「浴衣の半幅みたいなのだと、上の年代にはちょっと頼りないと思います。ですから私は、ふつうの半幅より長さも幅も少しだけ余分にとったサイズでつくっています。そのほうが結んでもお尻の大きさに負けないし、全体のバランスがよくなるから」

浴衣に使われる半幅帯でも、探してみると帯幅17cmぐらいのものがあるようだ(たとえば、本麻無地ならこちら)。



大人の浴衣姿は、帯幅がポイントかもしれない。


JUGEMテーマ:着物 きもの



着こなし | - | -

筒袖の半襦袢



日一日と緑が濃くなっている。
私は、若葉の繁る玉川上水や神田川沿いをよく自転車で走り抜けるのだが、なんともいえない爽快感。

とはいうものの、きものを着る身には気温の上昇が悩ましいところ。先週末のお茶のお稽古では、とうとう長襦袢を単衣にした。よほどきものも単衣を着ようかとも思ったが、今、単衣に袖を通してしまったら、夏に堪えられそうにない。


さて、過日、知り合いの呉服業界関係者からこんな質問を受けた。
「夏きものの薄物の下に、筒袖の(縁に綿レースとか縫いつけた)半襦袢、もしくはそのスリップ型のものを使うというのはどうなのだろうか?」と。


肌着と襦袢をミックスしたようなかたちの「半襦袢」。袖が筒状になっていて活動的である。半襟をつけたら、すぐにきものが着られる。身頃はさらしなので汗の吸収性がよい。これはこちらの商品。


その方いわく、「じつは、昨年、ある人気店ではじめて絹紅梅か明石縮だかを誂えた20代のお嬢さんが、当方へご相談にいらしたのです。うかがえば、衿と足袋を着けて納涼歌舞伎におでかけしたいのだそう。
そこの若い店員さんに勧められて、筒袖の半襦袢を合わせてお求めになったそうなのですが、着てみると透けて見えるので、ご本人的には少し不安……のようで」。

「絹紅梅に筒袖の襦袢はあまりよくない感じがしたのですが、ちょっと自信もなかったので、知り合いたちにも聞いてみたところ、意見がいろいろなんですよねえ。
夏きものをその先どれだけ着るか分からない初心者さんなら、価格的にも良心的な判断では?という声もあったのですが……」とも言葉を付け加えられた。

私が答えたのは以下の通り。


……半襦袢の「筒袖」は、お出かけをしないでざっくりと家できもの(木綿・ウール)を着るようなときに使用するものだと思います。もしくは、呉服屋の店員さんのように、きものを仕事にしている人の働き着の下着という認識ですね。

この頃は外出着として浴衣をお召しになる方が多く、とくに年代の若い方たちの袖奥から、レースの筒袖がのぞくことがありますが、その姿に違和感をさほど覚えないのは、もともと浴衣が湯上がりの気楽なものだったからでしょう。
ま、それでも個人的には、たとえば昼間に着てもおかしくないようなよそゆきの浴衣で、衿や足袋を着用するするならなおさら、袂のある襦袢を使うほうがおさまりのよい着方ではないかしら。

お出かけのきものは、きものと長襦袢がセットで「おしゃれ」が考えられていますから、そのお客さまがお求めになった「絹紅梅」や「明石縮」のような夏きもののおでかけ着(絽・紗・麻・大よそゆきの浴衣)には、袂のある長襦袢のほうが合うのです。
よそゆきでない縮や麻なら、場合によって筒袖でもよい場所もあるかと思いますけれど、きものを着ること自体が「ハレ」となりつつある今は、筒袖を用いるのは、「ケ」のきものをハードに着ている人が主ですから、夜に浴衣を着て花火で出かけるケース以外でしたら、ふつうの襦袢がよろしいですね。


夏きものをその先どれだけ着るか分からない初心者さんなら、筒袖の半襦袢なら価格的にも良心的な判断では?とおっしゃるプロの方とは意見が異なってしまうけれど、私は続けてこういった。


……そのお客さまは、上物に「絹紅梅」や「明石縮」を買おうという人なんですよね。
たぶんこれらのことをきちんと店員さんが説明していたら、筒袖の襦袢は買われないような気がします。
いちばんマッチするのは、これには麻のふつうの長襦袢でしょうね。

もし、私がお客さまの立場だったなら、いくら価格的に安くても、きものと微妙に合わず、使うシーンが限定されて、なおかつ透けて見えるものは買いませんよ。のちのち「使えないじゃないの」「あっちを買っておけば」と買い直したりするほうがくやしいですから。



じゃあ襦袢を買い直すしかないのだろうか? と、自分でも思ったのだけれど、ハタとひらめく。


……麻や絽ポリの夏用半襦袢でも、もともと袂のあるタイプが売っていますよね。こちらのお客さまにはそちらのほうがよかったと思いますが、ただ、それを今更言ってもどうしようもないですし。
考えられるのは、夏用の替え袖をお買い求めになる手があります。
絽ポリの替え袖なら、ネットでも扱っていますし、デパートでも見かけました。3000〜4000円ほどでしたよ。



「二部式襦袢」という名称で売られているものは、半襦袢に袖がついたかたち。袖の「振り」は、季節によっていろんなタイプがあって「ポリエステルの袷」「ポリエステルの単衣」「ベンベルグの絽」「本麻」(「絹の袷」「絹の単衣」もあるけれど商品数は少ない……がある。洗えることを主体としているために、ポリエステル袖が多くを占める。これはこちらの商品。


夏のポリエステル絽の替え袖。これをマジックテープがスナップで半襦袢に付けるようにしたらどうだろう。自分で麻の替え袖をつくってもよいけれど……。これはこちらの商品。


お持ちの胴体部の半襦袢に別売りの袖をつけられるはずです。
かなりお暑いでしょうけれど、好きなときに袖がつけられるので、気軽な浴衣なら筒袖のままをお召しになって、絹紅梅や明石縮のおでかけシーンでは替え袖をつけられたらよいのではないかしら。

お客さまにそのようにアドバイスされたらいかがです?

……最近は筒袖の襦袢でもあまり抵抗感がなくなっているのかもしれないけれど、傍目から見たら襦袢の「省略形」であることに変わりない。
筒袖は、花火など夜のイベントのお出かけに着る浴衣なんてのには、ちょうどよい。TPOなのだ、要は。



JUGEMテーマ:着物 きもの

着こなし | - | -

お茶会のきものの相談

昨日、きもののとある会で、お茶会に着ていく単衣のきものについて相談を受ける。
その方は、単衣の無地一つ紋付き、訪問着はいくつかお持ちらしい。御所解の訪問着を「これを単衣にしたら、おかしいかしら」とおっしゃっていた。

「御所解の袷は、お持ちですか?」
「いいえ。まだ一枚も持っていないの。だから一枚、御所解を持ちたいと思って」
「では『ファースト御所解』なわけですね。それなら、まず袷をおつくりになるほうが着る機会も多いと思います。ご覧になっている御所解の訪問着は、御所解でもかなり重めの柄付けで、単衣にされるにはもったいないですよ。これなら披露宴に着て行かれます。ということは、ずいぶんと『ハレ』感のあるきものだということでもあります。それほど重いものを単衣にしたら、現実的に、たとえば年に一度、袖を通すか通さないかほどの頻度のように思います」

「それなら、どういうものにしたらよいかしら」
「この御所解より控えめな訪問着か付下げのほうが、お茶会ならば着やすいと思います。ちなみに今度お出かけになるご予定の会は、どちらで開かれて、どなたが主催のお茶会ですか? またお客さまはどういうお立場で参加なさいますか? 開催場所やお立場によって、きもの選びも変わってきますので、差し支えなければお教えいただきたいのですけれど」
「○○○○でおこなわれるの。お招きいただいたほうです」
「だとしたら、もう少し軽めのしゃれた柄付けの付下げでもよろしいですね。東京の会でしたら、意外にすっきりとした無地場の多いものが周りと馴染みますよ」

いくつかの付下げを肩にかけて様子を見る。
50歳になったばかりのキャリア女性らしい。古典的な単衣の訪問着はおありだとのことなので、趣が違うほうが用途が広がるだろう。落ち着いたオーラを放つ澄んだ地色に、伝統的なやや小さめの柄をつけた地アキものをおすすめする。これなら、お茶以外の「およばれ付下げ」として仕事がらみのパーティでも活用できる。
締めたいという帯を持参されていたので、ついでに、どういう色の帯締なら「決まる」かも言葉を添えておく。

その方は結局、「モア・ベストならこっち」と私も思っていたきれいなコーラルベージュのきものを選ばれた。「御所解は、次回、ぜひ袷でお求めになってください。またお手伝いさせてくださいませ」とにっこり付け加える。
素敵。私も欲しい。自分が欲しいと思うものをおすすめできる幸せである。



JUGEMテーマ:着物 きもの
 
着こなし | - | -