一より習ひ

「稽古とは一より習い十を知り、
 十よりかえる元のその一」なのだそう。
 和の世界をマイペースで巡る
 植田伊津子の徒然記です。

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「いまどきの盛装きもの」展・シルクラブ

しばらくぶりのきものの展示会の仕事。「いまどきの『盛装きもの』展」である。
結婚式や気軽なレストランウエディング、式典、何かの節目などのときに着る現代的なきものの装いを特集したのが本展。この企画にかかわらせてもらった。


こういう時節に……と思う方もおいでかもしれないけれど、明るくて品のよい美しい色や柄のきものは、沈みがちな空気を一変させる。主催のシルクラブも「美しいものを見ていただくことで、皆さんの胸に少しでも灯りをともしたい」という気持ちで、この準備を進めていた。その思いにわたくしも共感する。

今回の目玉といえば、美智子皇后陛下をはじめ皇族方お好みのきものを多く手がけるという京都の『京正』の訪問着や付下げを多数用意しているところ。その数約50点。


こちらの商品は、写真では充分に魅力が伝わらない。あまりに繊細すぎる色・柄なのである。だからこうして写真でアップするのがもどかしい……。
波文様の波頭に金で刺繍をつけた付下げ。きものに仕立てると、まさしく訪問着の印象である。波文様の絵羽は、定番中の定番模様で、今も長く愛されているけれど、じつは波模様に出来不出来があるものだ。こちらの波の線は、のびやかなラインに勢いがあって、高い技術の糊目だとひと目でわかる。


素敵なチョコレート色の付下げ。この丸文の中に記された線の細さは驚愕ものである。それに、複雑なこの色には、青も赤もすべてを溶かし込んだ深みがある。


準備をしているときに、違う製造卸メーカーの営業担当の方とこんな会話を交わしたことがあった。

「今回は、京正さんの商品を多く並べられるんですね」
「ええ。こちらの商品はほんとうに素敵です。高度な友禅技術や刺繍で表された洗練の柄は小付け(柄が小さいこと)で品がよいですし、地色が清澄で落ち着きもある。卵色ひとつにしても、ただのぼやけた卵色じゃなくて、日本人に合うように絶妙にバランス配合されています。これはきっと引染なんでしょうね。こんな繊細な地色は、焚き染めじゃ出せないわ」
「京正さんの商品は、柄が少ないけれど、凝ってるんですよね。柄が多いよりも少ない反物をつくるほうが難しいといいます。『ここしかない』という場所に、力を集中して柄をつける。それも「つくり過ぎない」柄を、それとわからないような技術で。だから凝っていて飽きない。そういうきものは帯を生かせるものです」
「そうですね、まったく。このきものには、かならず力のある帯を合わせたくなりますよね。このきものたちを「優れたキャンパス」といったら、値段からして失礼に当たっちゃいますけれど。なるほど皇族の方たちをはじめ、多くのファンがいるのも納得ですね」

こちらの商品を、これほど比較して見られる機会は珍しいだろう。というのも、京正は、数をたくさんつくる製造卸メーカーさんではないのだ。無地場の多いきものの中では、日本トップクラスのクオリティーを誇るメーカーさんの作品をぜひご覧いただきたい。

さてさて、見るからに盛装、といったのきものが、じつはわたしは大好きである。
しかし、わたくしが実際結婚式やそういうハレの場に出掛けるとき、最近は重い柄の訪問着やこれでもかと金銀を施した重い袋帯などを使わなくなってきた。
そうした装いは浮くのである。とくに東京では。
なるべくシックに、けれど華やかに。そして最重要課題は「品よく」。

こういうきものは値段が高いことが多いから、元もとりたい。
ハレのいろんな場で、幅広く着られるような柄付けされたものだと助かるのである。だから、「つくり過ぎない」というニュアンスが大切な事項でもある。
そういうきものの「いまどき」のおしゃれはおもしろい。「ひねり」を効かせることができるからだ。


おもしろい力帯の中の一本。金銀糸を緯糸に埋め込んであり、光線で微妙に照りが生まれている。柘榴文様が、なんという大胆さ。


どんなきものにも合いそうな丸文橘唐草文様の袋帯。アイスシャーベットのような地色。


ふんわりとした唐織鳳凰紋の袋帯。地色はベージュで、文様は白一色、縁取りが金というシンプルな配色だ。今展は使い勝手のよい、あっさりとした白系の袋帯を多めに用意している。


光琳松をダイナミックにアレンジした透け感のある袋帯。透け感はあるが、オールシーズン使用できる優れもの。
はじめわたくしは、この袋帯にじつはあんまりそそられなかったのだが、昨日の展示会初日、いろいろなお客さまに仮当てして拝見していたところ、とても面白いなと認識を一変した。
大きな柄なので、お腹やお太鼓では、これらの一部分しか表れない。そうすると、なんだかよくわからないけれど抽象アートみたいな表現になった。締めると、マジックのように印象が豹変する帯だ。


古代染織染の第一人者、前田雨城さんの色無地も会場に並べている。こちらの色無地は訪問着のようなコクがある(訪問着と同等のお値段でもあるわけだけれど)。


お天気予報を見れば、お出かけによさそうな足許である。
よろしければ、気分転換に美しいものを見ていただければと思っている。
わたくしも明日は確実に終日在廊(他の日もいたりしますが、確実ではありません)。何か直接ご相談事があるならば、メールで予定をお確かめください。また会場では気軽にお声をかけてください。


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「いまどきの盛装きもの」展
〜軽めの装いが役立ちます〜


会場 
シルクラブ
   東京都中野区沼袋2-30-4
会期 2011年5月13日(金)〜19日(木)
時間 11時〜16時(会期中無休)




※付下げ訪問着は30万円台後半〜。唐織の軽めのなごや帯は10万円ぐらい〜。袋帯の中心価格帯は40万円台。
※震災の一助になればと、東北のお酒と御菓子が来場者にふるまわれる。昨日は、おなじみのお客さまが夕刻からギャラリー横のフリースペースで、ゆっくりお酒を嗜まれていた。とても楽しそうでしたよ!
※同期間に勝水貴一さんの作品展も。勝水さんは北海道の木工作家。魅力的な板皿と椅子の数々が並んでいる。

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