一より習ひ

「稽古とは一より習い十を知り、
 十よりかえる元のその一」なのだそう。
 和の世界をマイペースで巡る
 植田伊津子の徒然記です。

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和樂3月号特集「利休さんに学ぶ、茶の湯の『き』」

沖縄旅行以後、「まったくブログのほうが更新されてないじゃないですか?」と言われるわたくしであるが、烏兎匆匆として時間が流れてゆく。昨日までは京都におりました。

今日は少しだけお仕事の話を。

さて先週訪れた小学館の編集部で「3月号、売れてますよ!」と、『和樂』の副編集長、高橋木綿子さんからうれしいお知らせ。そりゃよかった。
編集長の五十嵐さんからも「お茶の人たちが、たくさん読んでくださっているみたい」と声がかかる。少し胸を撫で下ろす。



すでにご覧になっている方もいるかもしれないけれど、今、発売中の『和樂』3月号の「利休さんに学ぶ茶の湯の『き』」特集の編集にかかわった。(「『き』は何を意味しているのでしょう? 利休さんの『気』、『器』、『期』……?」と何人からか質問を受けた。『基本』の『基(き)』のつもりでした。少しわかりにくかったかもしれませんね。)

わたくしはこの仕事で、武者小路千家家元後嗣の千宗屋宗匠とはじめてお目にかかった。わたくしが実質担当したのは宗匠監修の約30頁ほどだったのだけれど、作業中はエキサイティングな日々で、わたくし自身、この仕事によってどれだけ目に見えないものを学ばせてもらったかわからない。
ご協力いただいたすべての方はもちろん、何より千宗屋若宗匠に謝辞を捧げたい。

最初わたくしは、昔、裏千家の機関誌を出している出版社に在籍していたせいもあると思うのだけれど、流派の家元後嗣というお立場である宗匠と「じかに」お話をすることに、まずとても緊張した。
会社員時代には、家元や、それにごく近いの方と仕事をおこなうなどという機会はわたくしには巡ってこなかったからだ。

だから今回の話をもらったときに、果たして自身が編集を担当するのに妥当な人物なんだろうか……といささか不安に思っていたものの、顔を合わせた宗匠から「植田さんのブログ、存じていますよ」と声をかけてもらって、とても光栄な気持ちに包まれ、「一緒に仕事がしてみたい! 利休さんにつながる立場の方と話す機会なんて、たぶん一生に一度しかないだろう」とやる気が沸々と湧き上がってきたのであった。
作業中はほんとうに幸せな時間だった。

若宗匠は茶の湯界の次代を担う茶人であると同時に、日本美術の学識も豊か。それは昨秋上梓された『茶』(新潮新書)を読めば明らかで、わたくしはあんまり内容がおもしろかったので、いろんな人に配って歩いていたほどである。少し話がずれてしまうが、本書についても少し触れておきたい。



これは「茶の湯はひと言でいえば、いったいなんなの?」「どうしてこんな道具ができたの?」「そこにはどんな美の視点があるの?」……日頃親しんでいる茶室や茶道具、そして茶の湯の核心ともいえる茶事のもてなしについて、茶の湯のあらゆる「what?」を、次期家元という“茶の湯世界の内側”の立場から平らかに解説したものである。

これまでの茶の湯解説書と決定的に違っている点はひとつ。

流派のトップとして、また茶人として生きてきた著者が、一人称でロジカルにお茶を解説している点だと思う。だから研究者の言葉、街のお茶の先生ともまったく異なる茶の湯の解説書となっている。

利休が遺した道具を実際に持つことができ、それを身近に置いて茶の湯をおこなっている人が、“揺るぎない実践”を踏まえながら、日本美術史や茶道史をも背景にして、茶の湯の世界を語っているといえばわかりやすいだろうか。

「お茶の先生」と「茶人」との間には、明確な違いがあると著者はいう。「茶人」という言葉に込められる著者の思いは深く、実践のお茶(茶事)こそすべて、といいきる姿勢にみずからの茶の湯に対する宗匠の絶対的な自負が透けて見えるだろう。

全体は、「誤解される茶の湯」「茶の湯の歴史を駆け足で」「茶家に生まれて」「利休とは何ものか」「茶席に呼ばれたら」「茶道具エッセンシャル」「深遠なる茶室」「茶事はコミュニケーション」というような章立てとなっている。
どの章を読んでもいても、整然とした理知的な言葉で簡潔な説明が尽くされていて、そうだったのかと頷くこと多し。とにかく『見えている風景が違う。やはりプロフェッショナルはすごいな』と、わたくしなどは感じてしまった。

本書は、わたしたちの歩んでいる先を、灯りを照らして案内してくれる心強さがある。この道をもっと深く進んでみたい、という気持ちになる一書に間違いない。

さてさて、いつものことながら、わたくしのブログは話が脱線してしまう。『和樂』のほうも話しておかねば……いけない。

今では当たり前として見ている楽茶碗も、2、3畳の小間も、そして茶の湯初心者が一番最初に学ぶ平点前も……今の茶の湯の原点をたどっていけば千利休に行き着く。利休さんが築いた功績を再認識しながら、茶の湯の原点を1時間で学べるのが本特集である。

利休さんを知るには一生かけても足らないのは重々承知の上で、『でも1時間で利休さんのエキスを吸収してみるとしたら……』という無謀な挑戦に挑んでみた。
構成については、和樂編集部、わたくし、そして若宗匠の3方向からいろんな提案がなされ、初心者からベテランの方々まで、見応え、読み応えのあるものを目指したつもりである。

その結果、ただいま注目のカメラマン鈴木心さんに
利休の代表的な茶室や茶道具を新撮してもらう頁をつくったり、林屋晴三さん(陶磁研究家)×若宗匠のスペシャル対談の他、利休が秀吉に命じられてプロデューサーを務めた北野大茶湯をイラスト解説する頁、また利休の茶道具、基本の「き」”ともいえる利休道具をぎゅっと凝縮して見開き2頁で紹介していたりもする。

本ブログの皆さんは「そんなの、知ってる!」事柄かもしれないが、雑誌という一過性の媒体ではあるものの、手許に置いて読み返してもらうことを念頭に置き、茶人に役立つ項目を厳選した。

よろしければ、ぜひお買い求めくださいませ(^_^)。


お稽古・茶道 | comments(5) | trackbacks(0)

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COMMENTS

Posted by seiko  at 2011/03/03 5:11 PM
一言、キイチの”基”ですな。

芦屋で世間話していた内容で、興味深く読めました。

また泊まりに来てね♪♪
Posted by 植田伊津子  at 2011/03/04 12:09 PM
聖子ちゃん
コメントありがとう! 芦屋ではお世話になりました。またよろしく〜。
Posted by Dr.K  at 2011/03/06 10:26 AM
はい、さっそく買ってきて読みました(^_^)
でも、1時間では読めませんでした(>_<)
内容たっぷりですもの!
Posted by ishiharaです  at 2011/03/06 7:50 PM
宗屋若宗匠の著書は凄い反響ですね

社中で頒けてもらって読みましたが
バイブルになりそうです
北の丸以来、徳川さんや光悦会、名古屋笑和会でも同席させていただき
不思議なご縁を有難く思っています

和樂、明日にでも書店に走ります。
植田さんのお仕事、楽しみにしています
あ、もちろんブログもね。

それから、10月に横浜で官休庵全国大会があります
そんな機会に、植田さんに逢えたらいいなって思ってます
今度はちゃんと名乗りますから…

Posted by 植田伊津子  at 2011/03/07 11:52 PM
Dr.Kさん
1時間じゃ無理でしたか(^_^;)。

石原さん
お心にかけていただきまして、いつもありがとうございます。
わたくしはそちらの流派ではないので、官休庵の全国大会でお目にかかるのはむずかしかろうという感じがいたしますけれど……きっと近々どこかでと思います。ぜひぜひ。

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