一より習ひ

「稽古とは一より習い十を知り、
 十よりかえる元のその一」なのだそう。
 和の世界をマイペースで巡る
 植田伊津子の徒然記です。

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小宮康孝 江戸小紋展・シルクラブ

 わたくしが18歳のとき、一番最初につくってもらったきものは、鮫小紋のきもの。いわゆる江戸小紋である。
お茶席や友人の結婚式、大学の卒業式にも着られる便利なものだから、と母が選んでくれた。

歌舞伎役者の
松本幸四郎夫人、藤間紀子さんのきものエッセイ『私のきもの生活』(文化出版局刊)という本では、型小紋についてこんな風に記してある。
少し長いけれど引用してみよう。


 
……そろそろきもののおしゃれを楽しみたい年代になったのでしょうか、私の友人たちにきものを着てみたいという人が増えました。先日も電話があって「何を買ったらいい?」という話。すぐには答えられなかったのですが、結局、「無地感覚のきものね。型小紋はどうかしら」と答えていました。

 私自身、とても重宝しているのがそうしたきものだからです。帯を合わせやすく、帯によって着こなしの幅が広がり、カジュアルにもフォーマルにもなります。
 どのようにもなるからこそ、その人なりのおしゃれが楽しめ、初心者にも通にも好まれるのでしょう。母もよく「着つくすとまた型小紋」と言っておりました。(中略)

 ……母があられと同じように好きだったのは、縞小紋。離れてみると無地のようにも見える、万筋と呼ばれるごく細い縞模様の小紋の背に縫い紋をつけ、ちょっとした外出からフォーマルまで愛用していました。私も劇場でのごあいさつの折など、大げさにならず、しかもきちんとした印象が出せるので着る機会が多いきものです。

この文章は、その当時の母の言っていた言葉と同じ内容だった。
西陣織のフォーマルな袋帯を締めれば、それなりの格式のある場に。またシャレ袋と呼ばれる遊び心にあふれた軽めの袋帯、染めのなごや帯も、すべて取り合わすことができる許容範囲の広いきものの筆頭が、江戸小紋といってよいだろう。

若かりしころは母の言うままにつくってもらったけれど、今、母や藤間さんの言っている意味がリアルに判る。
色無地より「きさく」に着られもするし、帯を変えれば格も自在にアップできる。帯を楽しめるきもの、それが江戸小紋だ。

さて、現在、沼袋のシルクラブ
(中野山田屋)でおこなわれている「江戸小紋展」は、重要無形文化財保持者(人間国宝)の小宮康孝さんの多種多様な作品を並べる恒例の会。極小の型の中に、お江戸の洒落を凝縮した内容が楽しい。



ところで、江戸小紋のよさは納得しているものの、
わたくし的にはこのきものの弱点も気になる。
何かといえば、長年着用ののちに生ずる色ヤケや汚れ。これはどんなきものでも避けられない現象だ。しかしながら、とくに江戸小紋の繰りまわし方法に、わたくしは数年来うんと頭を悩ませたことがあった。

色無地なら、現在の色よりも濃色に染め替えをするのが常套手段である。しかし江戸小紋は濃色をかけると、型が消えてしまう。いわゆるただの縮緬無地になるわけだ。

小宮さんの江戸小紋のすごいところは、色ヤケや汚れに強い「顔料」で染めているところ。顔料は染料と並ぶ重要な着色料で、水にも油にも溶けない色素である。これは、不透明で直接的な染色性がない。
ということは、生地に着色するには膠着剤が必要となるわけで、一般的な染色方法とは違う工程をとる。

顔料を多用する染色といえば、沖縄の「紅型」染めが代表的だ。紅型の強烈な色彩は顔料を用いるがゆえで、色上がりは皆さんご存じのとおり、鮮明で量感のあるものとなる。

となれば、強力な「顔料」を使う小宮さんの江戸小紋が独特な発色をするのも納得。少し見慣れてくると、「あの方が着ている江戸小紋は、小宮さんのものだ」と、ピンとブランドに気づくほどなのだ。

長く着られる工夫は他にもあるらしい。
型染めの場合、型を置いて糊伏せをして文様をつけたのちに染めるという工程をとるが、こちらの江戸小紋はその糊に若干のグレーを混ぜて、白抜きの部分を完全な「白」にしないのだという。
グレーがかった白は、顔料の強さをおさめて着尺に協調をもたらし、色ヤケや汚れも目立たせない働きをする。

「長持ちしすぎる江戸小紋!」、それが小宮さんがつくるそれの特徴といってよいかもしれない。

今年は帯を楽しむというテーマで、西陣の産地問屋・帛撰
や織り帯の老舗・川島織物、友禅作家の犬飼千賀子さん、ろうけつ染め作家の三谷奈可子さんたちの作品が種々多彩に展示即売されている。

あまり東京で見かけることのない「ひとひねり」の趣きの帯ばかり。
カッコよく江戸小紋を着たい、と考えておいでの方は、ぜひ足を運んで損はないと思う。

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重要無形文化財保持者[人間国宝]小宮康孝
江戸小紋展
〜江戸小紋に合わせる帯色々〜


会期  2010年10月15日(金)〜10月21日(木)
場所  
シルクラブ 中野山田屋
    東京都中野区沼袋2-30-4
電話  03-3389-4301
時間  11時〜18時 会期中無休

※江戸小紋の貴重なフィルム「美を極める」「日本が誇る匠の技〜小宮康孝」上映会が、毎日14時よりおこなわれています。(入場無料)


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