一より習ひ

「稽古とは一より習い十を知り、
 十よりかえる元のその一」なのだそう。
 和の世界をマイペースで巡る
 植田伊津子の徒然記です。

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今週末の展覧会情報

昨日のお稽古のあとは、曇天をにらみながら、都心へ。
今日はギャラリーを見て回ろうと決めていたのだ。きもの関係や工芸展など、お知らせくださる皆さん、いつもありがとうございます。


竹工芸家の
磯飛節子さんからは、日本橋三越本店での「第13回伝統工芸木竹展」のご案内。


5月24日(火)〜30日(月)、入場無料、日本橋三越本館1階中央ホール特設会場にて。

日本工芸会会員ならびに一般作家を対象にした伝統工芸系の展覧会である。磯飛さんはすてきな文箱を出品されていた。
木竹工芸のおもしろさは「滋味」。磨き込まれた木目のうつくしさや、竹を使った籠の表現を観察すると、自然をわが掌中におさめたいと願う、自己との真剣な格闘の痕跡がうかがえる。

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銀座・一穂堂ギャラリーでは「十代目  誉田屋源兵衛の帯展」。ちょうどギャラリーオーナーの青野恵子さんがいらしたので、誉田屋の帯の魅力についてお聞きした。


『春秋』と名付けられた袋帯(地が、渋い銀箔)と、波扇立涌地紋の無地染を取り合わせて。


誉田屋源兵衛(こんだやげんべえ)の物づくりの魅力は、京都で270年続く老舗製造卸メーカーであるにもかかわらず、江戸の粋を表現しているところ」にあるという。
今回は、桃山時代の意匠を取り入れた誉田屋らしい「攻め」感をただよわせる新作が並んだ。

そのなかでも注目は、緯糸に有名な名塩和紙の箔紙を使った箔帯だ。
兵庫の西宮の北でつくられる名塩雁皮紙(重要無形文化財)は、桃山・江戸時代からこの地に伝わるもので、泥土を混ぜて漉くために、虫害や変色に強く、燃えにくいなどの特徴がある。そのため古くから神社・仏閣・城館の襖紙として使用されてきた。
現在は人間国宝の谷野剛惟(たにの・たけのぶ)さんだけが手がけていて、伊勢神宮、桂離宮、日光東照宮、二条城などに使用される和紙も谷野さんの作だという。

その谷野さんの和紙を用いて箔紙を作成し、これを糸状に割いて緯糸として織ったものが、本展に並んでいる箔帯。デザインは、高台寺蒔絵の菊を思わせるものや、桃山小袖に表現される様式化された草花などを意匠として取り入れている。

こちらでは十数年前から開催している好評の帯展で、本展は2、3年ぶりとのこと。会期は今週の土曜日(28日)まで……なので、興味のある方は急いでお出かけを。

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九段下の
和食器ギャラリー・暮らしのうつわ花田では「岡本修(色絵)&岡田直人(白釉)陶工ふたり展」。5月18日(水)〜28日(土)。こちらも明日まで、でした(^_^;)。


花田のHPより。左は色絵あぜ道四方皿(岡本修)、右が白釉八角皿(岡田直人)。

昨年の12月の『甦る、古器。』展に出品されていたうつわに眼を見張り、お二方の仕事ぶりをあらためて拝見したくてうかがった。その節の古器展では、いろいろ買ってしまったわたくしである。
ちょうど店主の
松井信義さんが会場にいらして、昨年の古器展で、乾山写しの岡本さんの四方板皿や岡田さんの白磁鉢を購入したと話したら、今展のうつわについてもいろいろ説明くださった。

お話をうかがっていると、店主みずからが本当に『暮らしの骨董』を愛されていて、自分の愛する世界を、お客さまの食卓に、比較的廉価な値段のうつわにして届けたいと思っている気持ちが伝わってくる。
わたくし自身、骨董の染付のうつわをふだんの食卓で使っている人間だから、花田がプロデュースする骨董写しの現代のうつわは、その世界観も含めて、自然に魅入ってしまう。

今回、岡本さんが出されていた乾山写しの四方の向付……思わず食指が伸びる出来映え。岡田さんがつくるキレのある白磁のそばちょこ(驚くほど華奢だ)も、『草』のたたずまいながら『真』の格を備えた不思議な趣き。
わたくしはおふたりの世界、どちらもとても好きです。

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週末にかけてのお出かけ情報もひとつ。
横浜の
三溪園で、今日から3日間(27日〜29日)おこなわれる「日本の夏じたく」展である。今年で5回目を数える。


染色家・久保紀波さんは、出品作家でありながら、本展の事務局長でもある。自然の素材を生かした透明感のある扇や、墨を染料として用いた作品などが代表作。


銀や金を使って、和装小物を手がけるという銀線細工の松原智仁さん。今展はふだん使いできるアイテムも並ぶのだそう。


染織・墨画・漆・やきもの・日本刺繍・銀線細工・インドの布・竹工芸……などを手がける新進の物づくり作家10数人たちが、夏に向けての自作品を展示即売する。
すばらしい三溪園の庭園を背景にした『大人の文化祭』のような雰囲気で、好評を博しているという。大人はなにかと楽しくないと、出かけないのだ。

会期中庭園内の施設では、気軽なお茶席や点心がもうけられ(事前予約必要)、蒔絵体験や絹扇子の扇面づくり、ふろしき講座、古帛紗を縫う、などのイベントも各種予定されている。
詳しくは
こちらのHPを参照のこと。
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『甦る、古器。』展・暮らしのうつわ 花田

『甦る、古器。』展、九段の花田へうかがう。

この展覧会は、花田が自社にゆかりのある若手工芸家に依頼して、日本の昔のうつわである古伊万里や古染付、李朝、阿蘭陀、江戸期の瀬戸、乾山らの作品の「写し」を、1年の準備期間をかけてつくらせたもの。



店内を一巡して、「おお〜!」とわたくしは思わず声を挙げてしまったのだけれど、まさに出色の展覧会だ。

まず、「写し」の元となっている本歌のチョイスが憎い。

それらが、花田のご主人とつきあいがあった白州正子さんの蔵品を含むものであるからして、本歌自体が現代に訴えかける力があるのは当然なのだけれど、それを今の物づくり作家たちにつくらせるには、「これならできる」と思える作品を選び、そして本歌の《肝》がどこにあるのか、どこは手を抜いてよいのかなど、細部にいたるまで作家たちと意志疎通することが大切だ。

いくらすばらしい古作であったとしても、今の人にとって技術的にむずかしい本歌を選べば、遠い努力しかできない。
こういう「写し」という企画目的ならば、つくってもつくっても「近づけない」ものを依頼してはいけない。古作に肉薄するもの、もしくはそれ以上じゃないか、と第三者が唸るものをつくらせるところに、花田の審美眼と商売のセンスがある。

その部分で、本歌の選び方がうまいなあと感心してしまった。
たとえば、安藤和治さんが手がけた面取小鉢などは、本歌は白磁なのだけれど、これをそのまま写すのではなく、織部や黄飴、茶飴などの釉薬を用いてつくらせていた。本歌ももちろんステキ。けれど、写しもそれ以上に躍動的な味わいとなっている。昔の人も「こうしたものがつくりたかったのではないか」と錯覚するほどだ。

こういう幸せな「写し」をプロデュースされるところに痺れてしまう。ワクワクするではないか。


安藤和治さんの面取小鉢。1つ3360円。この写真はこちらのHPより転載。


南京赤巻小鉢の本歌が棚の上にあって、下にはその写し・古赤絵深皿4410円(青山窯)。マットな赤の質感、色の濃さ、染付の輪郭にうっすらと赤の釉薬が重なっているところ、たたずまいや雰囲気……一級の写しとなっている。

わたくしは、江戸時代やそれより前の古いうつわが好きだ。
けれど、今の物づくり作家がつくるうつわも大好きで、何より同じ時代に生きる人たちが、一生懸命につくるものを応援したい気持ちがある。過去の幻想にとらわれているつもりはない。
同じぐらいの力ならこれまでも新作を選んできたし、古いものは買えないことが多かったけれど、新作なら等身大のわたくしでも買えるのがうれしかった。

食器選びの眼でなく、お茶の眼で本展を見たら、またこれらのうつわが違って見えてきたりもする。
DM葉書の写真にもなっている片身代わり盆は、盆略点前に見立てて使うとおもしろいのではないか。かなり迫力のある盆略になるだろう。そうしたら、どんな薄茶器を取り合わせるとよいのか? 取り合わせの妄想の連鎖。イメージが触発される。

わたくしは乾山写しの色絵縞文四角皿を見て、「あ、これ主菓子を盛る鉢に使おう」と購入してしまった。他、衝動買い数点。
なんていったって安いのである。これだけ本歌の精神に近い写しで、この値段なら迷わない。


岡本修(石川県能美市)作、色絵縞文四角皿。
岡本さんは九谷青窯出身で磁器の色絵が本業で、日頃はこうした土ものは手がけない。けれど、花田さんいわく「今の作家の方は土に色絵を描ける人が少ないので、今展では磁器の作家に色の仕事をしてもらいました」。
これは土台の土の造形を、安江潔さんという別の陶芸家が手がけている。四角皿は意外にむずかしいのだ。四隅のどこかが浮いたり、反ったりしていて、がたつく作品もときどき見かける。この作品は、素地と絵付けを分業したからこそ、最善のセッションだと思う。土の人が、
きちんとした、ていねいな仕事をされている
それにしても、岡本さんのこの色の仕事に惚れる。上手い。


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甦る、古器。

会期 12月8日(水)〜14日(火)
会場 暮らしのうつわ  花田 2Fギャラリースペース
   東京都千代田区九段南2-2-5 九段ビル 1・2F
電話 03-3262-0669
時間 10時30分〜19時

※取り扱い作家たちは、青山徳弘、岩永浩、杉本寿樹、岡本修、西納三枝、海野裕、岡田直人、藤塚光男、安達和治、松沢三四郎、安江潔、吉岡将弐。約60点展示。

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芝大神宮の千木筥(ちぎばこ)

東美に行く途中、ちょうど芝大神宮の前を通ったので、お詣りしていこうと立ち寄った。朱の袴をつけた若い巫女さんが、神宮階段の前で静かに一礼したのち、颯爽と駆け上がっていく姿に惹かれたこともある。


遠く平安時代、一条天皇の御代に創建された一千年の歴史がある芝大神宮。江戸時代から多くの参詣人を集め、境内では相撲、芝居小屋、見せ物小屋がにぎわいを見せていたという。こちらの祭礼で有名なのは、「芝神明のだらだら祭り」。毎年9月13日から17日、種々の行事がおこなわれている。

お賽銭を投げ入れて拝んだ祭殿の向こうでは、白無垢の花嫁と紋付き袴姿の新郎が、今まさしく祝詞を受けているところだった。こんな機会に出くわすなんて、と思いつつ、両脇の親族一同が深々と頭を垂れながら神妙な面持ちをしているのを、わたくしはしばらくの間のぞき見ていた。

その昔、わたくしが小学生の頃は、自宅から花嫁さんが出て行くのが珍しくなく、近所でそういうこしらえがあると「花嫁さん、花嫁さんだえ」とそこいら中の子どもたちが各玄関を飛び出してきて、白無垢に角隠しの姿をうっとりしながら見送ったものである。

仲人の奥さんに手を引かれて歩く花嫁の側では、親戚のおじさんらしい人たちが、見物に来た人たちすべてに「花嫁菓子」や「餅」を配っていた。菓子は小さな白い紙袋に入っていて、飴やせんべいなどの駄菓子が幾種類か詰め合わされていたと思う。花嫁さんを見て、菓子ももらえるのだから、子どもたちはたいへんな興奮だった。

さて、花嫁さんは人生最大の緊張の1日のせいか、心もち目のふちの色が悪く、顔も驚くほど白かった。けれど、きつめの赤い口紅が引いた顔は冴え冴えとうつくしい。結婚式の花嫁とはそういうものなのだろう。

そういえば、もうかなりの長い間、花嫁さんの御菓子をもらっていない。少なくとも東京に暮らしてからは一度もないけれど、東京にはそもそもそういう風習がないのかもしれない。
そんな思い出も甦りつつ……芝大神宮でのお詣りの話。


芝大神宮で有名なのは、この「千木筥(ちぎばこ)」。東京の古い郷土玩具である。餅器を略して千器といったとか、千木よりつくったからという諸説がある。『千木』が『千着』に通じるところから、衣服の豊富を願って箪笥に収められるもの。かつ良縁に恵まれ、幸せな結婚ができるという縁起物なのだ。
きもの好きなわたくしも、さっそく購入してきました。東京の呉服屋さんが、何かの折りにお客様たちにお土産にわたすと洒落ているなあ。1200円。

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東美正札会、その他



東美正札会。1年に1度の歳末売り出し古美術市みたいな会である。
全国の古美術商がお値打ち価格で(2万円〜)、茶道具をはじめ、書画骨董を店名を表示せずに出品する。どこがどんな道具を出しているかはわからない。

本展は値引きはないけれど、その分はじめの価格設定が低いので、この会を楽しみにしている道具好きは多い。でも2日目に行っているようじゃダメなのだ。道具好きは初日の午前中に行って、良い物をさらっていく。

わたくしは茶道具を買いたいモードに入っているので、本当は初日いちばんに行くべきだったけれど、昨日はもう休めないお茶のお稽古日だったので「今年の正札会は行けないな」とあきらめていたのだった。
それに昨日まで、日曜は別の用事が入っていると勘違いしていたのだ。ところが昨日、ふさがっていた予定の勘違いが判明して身体が空いた。急遽「じゃ、正札会2日目だけど明日行こう」と決心。

会場で、古美術商の顔なじみ数人に次々と出くわしたのだが、「今日来てるんじゃダメだよ。植田さん」と声をかけられる。ごもっともです(汗)。

2時間ほどかけて棗を中心に見る。わたくしは、今、蒔絵の棗がほしい。しかしいまいちピンとこないまま、とはいいつつもせっかく来たので「売約済」の赤札を置いていく。

2時間ほど見て、古美術商のOさんを呼び出し、赤札を置いた商品を再度鑑定してもらった。
「箱も物も値段も適当のようですが、欲しかった『蒔絵』じゃなくてよろしいんですか」……さようですね。
蒔絵といいつつ、高松漆器に赤札を置いたわたくしって何? やはりもう少し時間をかけて探すかと思い直す(正札会は5日で終了)。


お茶席の券をいただいたので、茶席にて薄茶一服。
江戸時代後期の大徳寺435世大綱宗彦、通称だいこうさんの「歳暮」の軸。大綱さんは、
和歌、茶の湯を能くし、書画に優れた人。裏千家11代玄々斎宗室・表千家10代吸江斎宗左・武者小路千家7代以心斎宗守らと親しかったという。
花入は、どちらのものか聞き逃したけれど陣太鼓だろう。関東の方のこの時期の趣向は、赤穂浪士を重ねてくることが多い。


主菓子は京都・笹屋伊織の「どら焼き」。京都のお店では、毎月20日21日22日のみ販売しているもので、どら焼きの原形といわれている棒状の姿とともに珍重されている。
先日、
ちょうどわたくしも、シアタートラム公演で西田尚美さんにコレをお土産に持っていったのでした。

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美術倶楽部から散歩がてら銀座まで出て、谷庄。歳末茶道古美術展である。
昨日初日の午後は多くの谷庄ファンでにぎわったようだ。こちらはお店の名前がはっきりしている道具である。
いいなあ、欲しいなあ……と、またもや妄想美術館(MoSO《モソ》)。

千家好みのうつくしい揉み紙の上下、節のある藍紬地の中廻しというシックな表具を見せる仙叟(元伯宗旦の息子)の消息の掛け物が、さりげなくソファー横に掛けられていた。すごく端整な趣き。


茶碗や茶入などの表道具は、奥の茶室に陳列してある。入口付近は、釜や懐石道具、炭道具など。谷庄にしては気軽な10万台のものから、3桁ぐらいの金額だったりするが、それにしても茶道具が安くなった。美術倶楽部の正札会でも隔世の感を禁じ得ない。


谷庄の歳末茶道古美術展
会期 12月4日(土)〜11日(土)
会場 谷庄
   東京都中央区銀座6-3-2  ギャラリーセンタービル4階
電話 03-3572-6688
時間 10時〜18時(最終日は16時まで)

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島根出雲の作家、三原研さんの個展「それから」阿曾美術へ。
土器のようなタッチの作品をつくる人気陶芸作家である。

今回はいつものグレー調の須恵器的な作品群とはちがって、赤褐色のテラコッタ調の作品を展開。弥生土器のような明るさをもたらしているよう。懐かしい感じがする肌。けれど手にしてみると、持ち重りがして軽さはない。がっちりと中身が詰まっている。

わたくしは、三原さんの陶器に対するディテールの仕上げ方に好意を寄せているけれど、形に関しては少し冷静になる。
彫刻造形のようなフォルム。神経の張りつめ方。そこに、この方の作意の執念を感じとれ、ある部分、興趣をそがれるところがあるのだ。しかし、そういう花器ではなく、用途がはっきりしている茶碗の場合は、実用の制約があるからこそ「しばり」を生かした造形がおもしろいと感じている。

茶碗は「弥生テラコッタ調」「ガラス釉+焼締調」「黒々の須恵器調」など、これまで見たことがなかったさまざまなタイプを展開されていて、三原さんの果敢な実験態度に元気をもらった。それに売れてるしー。

三原研展「それから」
会期 11月30日(火)〜12月10日(金)
会場 阿曾美術
   東京都中央区銀座3-3-12  銀座ビルディング5階
電話 03-3564-2209
時間 11時〜18時


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コーフン茶道具

AKB48の前田敦子が好き。少女時代も好き。


AKB48の前田敦子さん。可愛いですなー。

わたくしではない。息子の話である。どちらもただいま中1男子が熱中しているアイドルたち。わたくしは、まったくそちら方面にうといけれど、息子の影響で多少なりのテレビを見、そちら情報の収集に余念がない。
なにげなく「……前田敦ちゃんは、お母さんに似てるんちゃうか」とつぶやいたら、「いつこ最低」と息子はとたんに態度が冷たくなった。もちろん冗談ですがな(汗)。危ない危ない。

「少女時代って、みんな足がきれいなんだよー」
「YouTubeに、AKBや少女時代の歌を“お気に入り”登録していい?」
彼女らがテレビに出ていると、ハフハフといった感じで画面を食い入るように見ている息子。
もしも、もしもであるけれど……息子が彼女たちの側に行くことがあったり、彼女たちが使用した何かを見つけたら、彼は卒倒しコーフン状態になるのではなかろうか。たぶん、わけのわからないこともつぶやくに違いない。

わたくしのコーフンは、さしずめ素晴らしい茶道具を前にしたときである。
今日は素晴らしい茶道具を前にしたら、それをどう表したらよいのか、自分の言葉がなくなることを知った1日で、そのときのことを冷静に表現するには時間を置いたほうがよさそな気がする。

また、自分のなかできちんと整理できたら、ここに記したいと思います。

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現代能楽集后Ε轡▲拭璽肇薀

打ち合わせに興じすぎて間に合わないと思ったので、電車の中でも小走り。ぎりぎりセーフでした。

女優の西田尚美さんに誘っていただいて、三軒茶屋のシアタートラムに夫と「現代能楽集后 惱嫺抜檗戞惱售欧気鵝戞悵Δ慮歹亜戞弩演(公演終了)へ出向く。

これが滅法おもしろかった。
本公演は、難解だと思われている能を現代演劇として料理して見せる温故知新のシリーズ「現代能楽集」の第5弾目で、西田さんから「植田さんは、元の物語を知っているだろうから、たぶん興味を持って見てもらえると思う」と言われたとおり、非常に響いたのである。

『春独丸』←「弱法師」、『俊寛さん』←「俊寛」、『愛の鼓動』←「綾の鼓」というふうに、それぞれ能の演目が題材となっている。

これらの3本が、上記の順番で演じられたわけなのだが、心憎いのはコミカルな息抜き仕立ての『俊寛さん』の立ち位置で、本物の能公演でも能と能の間に短いオモシロ演目の狂言が入るのと同じような3部構成仕立てにしている部分も含め、こまごました小技がイチイチ、わたくしのような半可通の古典好きに効いているのである。

これを見れば、能が普遍性を持っていることを再確認できるだろう。能で描かれる世界は、けっして特別ではない。

春独丸での親子の情愛や、俊寛さんでの人間の孤独、愛の鼓動での情の行方知れぬ不安……それら物語の内面だけを残して、他の要素を換骨奪胎し、シチュエーションや性別をあらためて、現代に通じる劇の言葉につくりかえたのは、川村毅さんという劇作家である。

川村さんが主宰していた劇団、第三エロチカの芝居のほとんどを、わたくしは20代に観ていた。
約20年前の演劇界は空前の活火山活動をしていて、われらは今日は本多劇場、明日は築地本願寺だのと、エネルギーに満ちた芝居をツメツメの小屋で体験したものだ。
狂気に満ちた新宿八犬伝の連作から20年以上経って、川村さんがこういう戯曲を手がけられることを不思議な感覚が襲う。能も八犬伝も、狂気も妄執も、同じベクトルの上に存在できるのか……と。

強い川村さんの言葉を、よい意味で『のれんに腕押し』みたいな無重力感漂うように料理をしたのは、
ペンギンプルペイルパイルズ倉持裕さん。わたくしはこの方の演出は初見。けれど、おみそれしました。
川村さんが書く台詞って、どこか80年代的というか世紀末の匂いがする(ちなみに、唐十郎さんもそういう感じ)。それは力強い泥臭さとなって、迫力ある刃を突きつけたきたけれど、今の時代は「熱くなるなよ」と、人間関係を巧みに拒否する部分がある。
芝居が、一種希薄ともいえながら、それでいて「人とつながっていたい」と懇願する21世紀対応の味つけになっているのは、倉持さんの演出があってこそではなかろうか。

世の中に保湿テッシュが出てきたときに、「なるほど! こういう手があるか」とわたくしは思ったものだ。
鼻をかみはじめたらやめられないみたいな、保湿テッシュの倉持ワールドである。劇は、役者たちを走らせないように軽いブレーキをかけつつ、個性の花を咲かせている。おかしなダンスや間(ま)、小道具などの使い方など……明るいユーモアに満ち、それでいてたたずまいが清い。


終演後、楽屋にうかがって西田さんと少し話す。また、お互い時間にゆとりができたら、ゆっくり遊びましょう。楽しみにしています。

それにしても夫の席の隣が、嵐の櫻井翔くん。その後ろが、NEWSの増田貴久くん。その他タレントさん多数という、近年まれに見る業界人遭遇率が高い1日であった。

われらは一般人の夫婦。とくに夫は、チャーミングな西田さんを前にしただけで、額から流れるような汗を流し、所さんの番組の第一町人発見みたいなテンションで、わが実家に「伊津子さんをお嫁にください!」と言いに来た以上の緊張した様子。
それに加えての櫻井・増田くんであったから、高揚しないわけにいかないのであった。

われらのコーフン状態が知りたい方は、個別にご連絡ください。心ゆくまで話します。
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聚光院での撮影

大徳寺の聚光院で、とある撮影があった。来年のお仕事である。
その前に、大徳寺の近所で、またもや、きざみきつねのあんかけうどんを食べて気合いを入れる。


大徳寺の金毛閣(きんもうかく)。
大徳寺は臨済宗大徳寺派の大本山で、広い寺域に別院2寺と21の塔頭を有する。鎌倉末期に、大燈国師(だいとうこくし)により開創され、花園天皇と後醍醐天皇の厚い信仰をうけた。応仁の乱で建物は焼失したが、47世住持の一休宗純(いっきゅうそうじゅん)が堺の豪商の保護をうけて復興し、豊臣秀吉や諸大名によって建物などが寄進されて、江戸時代初期に現在の建物はほとんど整えられた。
茶祖・村田珠光や、利休などの帰依を受けた、茶の湯に縁の深いお寺。


聚光院入口。こちらは、三好長慶(みよしながよし)の養子・義継が永禄9年(1566年)に養父の菩提を弔うために笑嶺宗訢(しょうれいそうきん)を開山として建立。利休をはじめ、三千家歴代の墓所でもある。


雨が降りそうで降らない、という絶好のお茶の撮影日和。ピーカンだと、茶庭はきれいに撮れないのである。(結局この日は、徐々にポツポツと小雨が降りはじめたが、撮影はお湿りで苔の緑が冴え、かえってよかった)

わたくしは、はじめて聚光院の閑隠席(重要文化財)に入らせてもらった。となりの枡床席(こちらも重文)も拝見させてもらう。
ともかく、お茶をしている人間ならば「わおっ」というような茶道具類が見られて、静かな感動に包まれた至福の1日。


利休150回忌の寛保元年(1741年)に表千家7世・如心斎が造り、寄進した閑隠席。


そのあと、別の場所へ移動して撮影が続いた。
関係各位の皆さん方に、ただただ感謝。わたくしは、今日という日を、きっと忘れないだろう。





晩に帰京。
息子には定番の赤福餅のお土産である。うれしそうに受け取ってくれた。

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京都市内うろうろ

本日も京都である。
今日はある企業との打ち合わせの前に、思い立って祇園の
権兵衛へ。



京都に来たら、おうどん。それも、あんかけ一辺倒のわたくしである。昨日は淡交社でフツーのおうどんを食べてブツブツと文句を言ったけれど、もともとこれが好きなので、京都では毎食おうどんでも構わない。


権兵衛は雑誌にもよく登場する人気店。注文をしたのは「のっぺ」1000円。はふはふ言いながら、やわらかーいおうどんをすする。あんの下に、しいたけやかまぼこ、たけのこなどの具が隠れている。上に載っているのはすり下ろした生姜。


こっちの麺は、東京のそれよりやわらかく、うつわから持ち上げようとするとブチブチと切れる。ふつうなら「コシがない」と表現される代物だけれど、これがいいのだ。

コシのあるおうどんを食べたければ、讃岐うどんを食べたらよいのである。クタっとなった病人食みたいな麺が、とろみのあるあんと絡み合う絶妙なマッチング。
それに祇園は観光客がわんさかといて、たかがうどんというなかれ、という値段でもある。
「京都だわね……」と思わされる。





祇園巽橋の紅葉。こちらもすごい人でした。ぎをん齋藤の宮林さん、お店に寄らずすみません。


用事を済ませたのち、駆け足で一衣舎京都展初日の「ちおん舎」へ。
きもの*BASICルール佐藤文絵さんが、展示会のお手伝いをされていて、一衣舎の木村さんや奥さま、参加作家の方々とともににこやかにお客さまを迎えていた。




一衣舎秋展は11月23日までだった。

佐藤さんと互いに近況報告をしていたら、ちょうど会場に高橋徳さんの取締役・高橋欣也さんがおいでになり、「植田伊津子さんですよね」と声をかけられる。

いつも本ブログをお読みくださっているとのことで、「はじめてお会いした感じがしませんが……」と冷や汗が流れるようなことをおっしゃってこちらのほうが恐縮する。

高橋徳さんのお仕事は、
千總さんの作品を通じて拝見していて、こちらが手がける友禅は、京都のいろんな意味での宝物であると感じている。わたくしは、作家作品とは異なる、感情表現を抑えたソフィスティケイテッドな「職人らしい」友禅が、京都には絶対なくてはいけないと思っているけれど、本工房はひたむきに本物の京友禅に取り組んでいる。
こちらは一般の方を対象にした
「友禅教室」の活動を通じて、広く京友禅の普及に努めている点も注目に値する。

その後、
に志田さんや古美術店数軒に寄り、夕刻早めに仕事関係者に連れて行ってもらった木屋町で、軽く会食して帰宅。
まだまだ関西にいます。


錦市場の側を通ったら、ごった煮のようなにぎわい。11月の京都の週末って、こんなんでしたか……(汗)。

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そうだ、京都行こう【北村美術館→野村美術館】

紅葉のこの時期に京都に行くのは、もしかしたらはじめてかもしれない。
今夏、母と11月19日に裏千家でおこなわれる宗旦忌に行こうか、と約束していたのである。
せっかくなので前日から京都に入って、お茶の美術館を鑑賞しようと計画した。


まず北村美術館に向かう。こちらは、代々山林業を営んだ実業家・北村謹次郎氏のコレクションを公開する私立美術館。


入館した受付から眺める「四君子苑」。この北村美術館は、氏の邸と庭の隣に建っていて、かつてのご住居の一部が美術館内から眺められる。邸宅は国の登録文化財に指定され、春季と秋季展覧会の期間中、それぞれ1週間ほど公開されるのだそう(それ以外の時期は非公開)。一度中を拝見したいものだ。

東京でも、近代数寄者の蒐集品が見られる私立美術館は根津美術館根津嘉一郎)をはじめとして、五島美術館五島慶太)、畠山記念館畠山一清)などの名前が挙げられるけれど、わたくしは北村さんの趣味がいちばん好み。堂上風で大和的なコレクションはおおいなる憧れであるし、どの道具を見ても、清潔感があってかろやかだなあと感じるのである。

なんで老大人のご趣味が、こんなにも『女子(←歳はとっておりますが一応……)』の胸にヒットするのだろう、とさえ思う。

茶の湯の本道である侘び寂びに惹かれる部分はもちろんあれど、それを自分に重ねてみると、そこまでの厳しさやモダンさ、男性的な趣きには多少ついていけそうもない自分もいて、わたくしという人間は、品のよいはんなりとした風が好みなのだなあと、しみじみ思われる。というわけで、まことに勝手にシンパシーを寄せている次第。

さて展覧は、恒例の秋季取合せ特別展で、タイトルは『秋侘ぶ』。
こちらは、茶事のシーンごとに道具組をして見せる展示様式なので、一会の茶事に招かれたような気持ちで、茶道具や美術品を見ていくことになる。

本席の掛け物には、有名な「石山切二枚継 貫之集断簡」が出ていた。きらびやかな銀金箔散らしの料紙の継ぎ紙に、藤原期の仮名文字の古筆が流麗あざやか。
『いいなあ、こんなの欲しいなあ……』北村さんのところへ行くと、妄想度100パーセントである。

懐石の酒器の設定が寄盃仕立てで、とくに斑唐津などは、とろりとした時代の陶肌が左党でなくとも手を伸ばしたくなるほど。
堅手片身替の御本茶碗、清水道竿の茶杓(銘「二千里の外」)もステキ。くどくて申し訳ありませんが『こういうの、欲しいなあ』。

松永耳庵翁が、北村さんの茶事に夫婦で招かれた御礼の消息を、北村さんが掛け物に仕立てたものも散見。
御礼の言葉もそこそこに、「ほんとうは早くに返事を書かなければいけなかったのだけれど、いろいろありまして遅くなっちゃって……」とか、手紙の3分の1ほどが言い訳めいていて、それもおもしろかった。

母と2人で「お茶でつながっている親しい人たちの微笑ましい様子がしのばれるわね」と、読み下しながら感想をいい合う。


次は、野村美術館秋季特別展『一楽二萩三唐津』後期展
茶の湯では、茶に適う茶碗のやきものを「一楽二萩三唐津」という言葉で表したりする。利休が、陶工長次郎につくらせた軟陶の抹茶専用のやきものが楽茶碗。萩と唐津は、ともに朝鮮工の技術を取り入れて16〜17世紀初頭に開窯したやきもので、山口県の萩焼、佐賀県の唐津焼である。

本展で珍しかったのが、古い時代の萩(元禄以前のものは、古萩として尊重されてきた)。総じて豪放雄大な佇まいが持ち味。
時代を遡るほど井戸風が多い。他に斗々屋(ととや)、粉引(こひき)に近い趣きのものがある。萩は高台も特徴的で、割高台などかたちが変化に富んでいたりする。
萩の造形の原点が見られる好適な展覧会で、こちらも必見。

野村美術館の前の歩道は、紅葉に訪れる観光客でいっぱい。南禅寺や永観堂がすぐそば。

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秋季特別展
秋侘ぶ

日時  9月14日(火)〜12月5日(日)
    10時〜16時
会場  北村美術館
    京都市上京区河原町今出川下る一筋目東入梶井町448
電話  075-256-0637
休館日 月曜
入館料 600円

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秋季特別展
一楽二萩三唐津

日時  【後期】10月19日(火)〜12月5日(日)
    10時〜16時半(入館は16時まで)
会場  野村美術館
    京都市左京区南禅寺下河原町61
電話  075-751-0374
休館日 月曜
入館料 700円

※立礼席600円で、お抹茶と季節のお菓子アリ。16時まで受付。


【おまけ】
お昼ごはんに立ち寄ったのが、北村美術館そばの韓国喫茶「
李青(りせい)」。あちらの国のお餅が入った熱々の雑炊・トックと、多種の野菜がきれいに盛られたビビンパをいただく。やさしいお味でした。


北村美術館でご一緒だった方々と、こちらでも鉢合わせする。きっと、北村→李青はコースなんでしょう(笑)。




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新高機組の会→茶ガールの休日展

ジャパンシルクセンターでおこなわれている「第9回 新高機組の会」初日へ。帯を扱う京都の産地問屋・帛撰(はくせん)主催による西陣織の作品展である。
今年もうつくしい作品がそろった。


公家装束・小袿(こうちき)の上品さ、生地の質感を表現したいと帛撰がオリジナル創作する「袿錦(うちきにしき)」の帯。琳派の紅白梅図文。軽くて締めやすく、伝統文様でありながらシャレ感もある。


人気の友禅作家・品田恭子さんの染め帯の菱文様を唐織にアレンジしたもの。「品田先生にお願いしてね、文様を写させてもらったんだ」と帛撰主人・小口和興さん。
品田先生と小口さんは長年の知り合いで、品田さんの個展会場には
帛撰が手がける帯がともにある。
これは、元の染め帯にあった品田配色を生かしつつ
牡丹や葉文などを表現する。日本建築の釘隠にも似た菱のデザイン、独特な装飾性がおもしろい。


アール・ヌーヴォーを代表するフランスのガラス工芸家、エミール・ガレのとんぼを「すくい」の技法で表した袋帯。文様部分は「綴織」。これほど多配色で繊細に表現されている帯は市場でも少ない。



新宿伊勢丹5階の和食器フロアでおこなわれている「わび、さび、かわいい♥  茶ガールの休日」展示会初日にも顔を出す。「肩の力を抜いたイマドキの『お茶』のかたちを提案したい」とさまざまな企画を仕掛ける異色ユニット・一品更屋(いっぴんさらや)が、京都の老舗茶碗屋・たち吉の協力を得て、かわいいお茶道具を使った「等身大の茶の湯」を提案する。



ちなみに「茶ガール」というのは、衣食住の生活と同じ視線で、自然体にお茶を楽しむ女子を指す。女子といっても年齢制限はないみたい。ということは、わたくしも「茶ガール」のひとりなのでしょう、ホホホ(汗)。

今回、本展「茶ガールの休日」で紹介するのは、椅子とテーブルによるパーティー形式で気軽にお抹茶を楽しむ「ジャパニーズ・ハイティー・スタイル」。
忘年会やお正月のシーズン、みんなで集まって食事をした後に、お抹茶でリラックスする時間を持ちませんか、と誘う。



こちらでは、茶ガールと同世代の、女性の陶芸家や物づくり作家13人がつくる手頃な茶道具、パーティーで使える食器がリーズナブルな値段で購入できる。その中のひとり、岡崎裕子さんが、近々テレビの人物ドキュメント番組に登場されるのだそう。会場にはちょうどご本人さんがいらしたのだけれど、ほんわかしたかわいらしい方であった。

週末には、フリーアナウンサーで茶人でもある深澤里奈さんと岡崎さんによるフリートークの他、傳田京子さんのお呈茶などのイベントもあって、盛りだくさん。

茶の湯がにぎわうのなら、まずは、どんなことだってしたほうがいいのだ。茶ガールや山ガール、ガールだらけになっても。

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帛撰主催
第9回  新高機織の会


会場 ジャパンシルクセンター
   東京都千代田区有楽町1-9-4  蚕糸会館1階
日時 11月10日(水)〜12日(金)
時間 10時〜19時(最終日〜16時)
電話 03-3215-1212

※展示のみの非売の会。

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わび、さび、かわいい♥ 茶ガールの休日

会場 
伊勢丹新宿店5階  和食器プロモーション
   東京都新宿区新宿3-14-1
日時 11月10日(水)〜22日(月)
時間 10時〜20時
電話 03-3352-1111(代表)


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